【運送業界の未来】トラックドライバー歴23年が語る、今後生き残る運送会社とは?【ワークライフバランスの重要性】

この記事では、トラックドライバー歴23年の私が考える、「これから生き残っていく運送会社とは?」というテーマで、とくに若い世代はどういった運送会社を選ぶのかを解説します。トラックの仕事を探されている方の運送会社選びの一助になれば幸いです。
こんにちは!
私は22歳〜45歳まで、業界で約23年走ってきた現役トラックドライバーです。
これまで大型トラックでの長距離もやりましたし、タンクローリーでの液体輸送、2トン、4トントラックの地場配送も経験してきました。荷主の工場で朝から数時間待たされたこともあれば、雪で通行止めになった高速道路で夜を明かしたこともあります。実に様々な運送の現場を経験してきました。
そんなふうに長い間走ってきた中で、数々のドライバーとの出会いと別れがありました。そこで最近思うのは、「給料がいいから」だけでは人は続かない時代になったんだなという現実です。
たとえば昔は「きつい・危険・帰れない」仕事でも、ある程度の給与さえ出れば人は集まりました。
「帰れなくても仕方ない」「長時間は当たり前」という空気すらありました。でも今の若い世代は違います。
採用担当の人から聞いたのですが、最近の、特に20代〜30代の若い求職者は、「年間休日120日程度や完全週休二日」など、どれくらい休日が取れるのかを一つの基準にして会社を選ぶ傾向にあるそうです。採用担当者も「求人票に休日数をどう書けるかで応募数が変わる」と話していました。
そんな、休みが取れる=応募が増える時代になった理由を、厚生労働省が発表している数字や現場ベースの根拠をもとにしながら、業界で長く勤めるトラックドライバーの観点から解説していきたいと思います。
ブラック運送会社には面接すら来ない現実


昔と比べて、なんで面接にすら来てくれる人がいなくなったんだろう…

それはもう、今の時代に合った働き方ではなくなってきているからですよ
運送業は、ただでさえ「危険でキツイ仕事」というイメージが先行して、嫁ブロック(奥さんや家族から止められる)されることもありがちです。そこに「休みが少ない・取りにくい」という条件まで加わったら、若い人がわざわざ応募するわけがありません。
昭和・平成時代の“ゼロ賃金奉仕文化”のあるある

「タイパ」という言葉をご存知ですか?
Z世代(1990年代半ばから2010年代序盤に生まれた若い世代)を中心に重視されている考え方「タイムパフォーマンス」の略称です。
昔の運送会社は賃金も出ないのに、休日に会社に出てきて会社のために何かをしてくれる社員がいました。貴重な休日をゼロ賃金で会社のために使って、得られるものは自己満足と会社から喜ばれて承認欲求が満たされること。
今の若い人は、そんなタイパの悪い事は真っ向から否定するのではないでしょうか。

昔は休みの日に会社に出てきて、給料も出ないのにタイヤのホイールをピカピカに磨くやつがいたよ
感心なもんだった

ああ、いましたね
平成20年代に入るくらいまではよく見ましたよ
こまめにトラックを洗車して、タイヤホイールをピカピカにして、わざわざ言わなくても良いのに“俺は社長に可愛がられてる”ってアピールする人とかもいましたね
もちろん、本当にトラックが好きで熱心にトラックを綺麗にしている人もいました。しかし中にはサイコパス気質な人が社長に媚びを売るためにやっていたケースも…。
“奉仕活動アピール”の結果、その人は次第に社長から特別扱いされて、他のドライバーから「またやってるよ…」と白い目で見られる。これも当時の“あるある”でした。
確かに、当時は「休日返上で働いて会社からの評価を得る」という風潮があったりしました。でも今はそんな奇特な人はほとんど見なくなりました。
現場エピソード①:トラックは俺の彼女!?


懐かしいエピソードで言えば、昔の同僚で、「俺の彼女はこのトラックだから」って本気で言ってた先輩がいたなあ…
休日返上でトラックをピカピカに磨き上げ、キャビン(運転席)に芳香剤を何種類も並べて、長くてイカつい目を引くようなシフトノブに交換し、ハンドルカバーもド派手な色で…そのこだわりは尊敬するけど、今の若い人が見たらたぶんドン引き(苦笑)。

昔は“トラック愛”で休日も会社にいたりするのが普通な感覚もあったけど、今の若者にそれを求めるのは無理ですね
なぜ都合の良い人材が消えたのか?


今の若いやつは根性がないんじゃないか?

違いますよ!
根性がないんじゃなくて、時代が変わったんです
その理由は大きく2つ。
- 給料が増えない
インフレで物価は上がっても、手取り賃金はほぼ横ばい。2024年問題以降は「残業で稼ぐ」ことも難しくなったのもあり、昔みたいに“頑張って働けばどんどん増える”という環境ではなくなった。 - 情報が広がって、労働者が賢くなった
ネットやSNSで情報が広がって、ブラックな働き方を避ける意識が高まった。あまりに酷い労働環境の会社は、SNSで“ブラックな実態”として拡散されてすぐにバレる。もう会社から都合よく扱われない時代になりました。
ですので、ゼロ賃金で会社に奉仕して、会社からの評価を得ようとしてくれる都合のいい人材なんていうのは、もう絶滅危惧種になったと言えます。
昔と今の「休日の価値観」


でも昔は休日出勤もして稼ぐのが普通だっただろう?

それは“稼ぐ=会社に依存”の時代だったからですね
みんな“稼ぐ意識”がなくなったわけじゃないんですよ
今は会社に依存しなくなった人が増えてきてるんです
インターネットの発達によって稼ぎ方にも多様性が生まれて、会社の収入だけに依存する生活スタイルから、稼ぎ方を自分で選ぶ時代へと変わってきているんです。
- 昔:休日出勤で稼ぐ → 社長に評価される
- 今:休日は休む/副業や投資で稼ぐ → 会社に依存せず自分の力で収入を作る

むしろ稼ぐことに意欲が高い人ほど、休日出勤より副業や投資で収入を作るようになってきています
副業・投資で稼ぐドライバーが増えている


副業なんかして、本業に支障が出るんじゃないのか?

いやあ〜、逆なんですよね
うまく使い分けて、リスク分散している人が増えてるんです

リスク分散?

はい、例えば万が一にも会社が倒産したら困るけど、副業でそれなりに稼げるようになっていればその心配も軽減できますよね?

な、なるほど…
実際、周りの仲間でも増えています。
- 40代のAさん:休日にYouTube運営。広告収入が月数万円ほど。
- 30代のBさん:地場配送のかたわら、軽貨物で副業。月5〜10万円の副収入を得ている。
- 50代のCさん:株や不動産投資で配当・家賃収入を得ている。休日出勤するより効率的に稼げるので、休日は投資の勉強をする時間に充てたいと思っている。

もう“休日に会社で稼ぐ”より、“休日は自分のために使う”のが当たり前になってきています
現在ではソフトバンクやソニー、NTT、三菱UFJ銀行などの大手企業に限らず、公務員ですら一部で副業が認められてきている時代になっていますね。

データで見る「休みが重視される」時代
最近の調査でも、その傾向は数字で明らかになってきています。
- 厚労省の調査では、労働者の年間休日は116.4日で過去最高。
- 若手は「完全週休2日」「年120日以上」を重視する傾向が強まっている。
- 物流業界は慢性的な人手不足で、約7割の会社がドライバー不足と回答。

数字で見ると、どういう傾向になっているか、とてもわかりやすいですね
つまり、休日の多さが採用のカギになってきているんです。
同僚の声から見えるリアル

ベテランの同僚に聞くと、

もう体力的に夜中の運行はしんどい

定年まであと数年だけど、この先若いやつが入ってこないのが不安だな
こういう声をよく聞きます。
実際、20代や30代のドライバーはほとんどおらず、40代の私が“若手扱い”されるほど。平均年齢は年々上がり、10年後どころか、このままだと5年後には絶望的に人手が足りなくなる未来は確実です。

人手不足で倒産したっていう他社の話を聞いたりすると、決して他人事には思えないんですよね
現場エピソード②:配車担当の悲鳴

最近よく聞くのがこれですね。
「土日の便を誰に任せるかで毎回頭抱えてる」って配車担当(トラックの運行計画を決める担当者)の嘆き。
最近では、休日に出勤したがらない社員が増えてきており、配車係が「なんとかこの日曜日、出てくれないか」とドライバーに頼み込んでいる光景もよく目にします。

昔は“土日こそ稼ぐチャンス”って取り合いだったのに…

今は“土日は休みたい or 副業したい”ですからね
休日出勤の取り合いなんて、今や都市伝説ですよ(笑)
ある1日の現場の流れ:拘束時間は依然として長い


私の今の仕事を例に、ある1日の流れを紹介します
- 朝4時:起床
- 朝5時:出勤、点呼
- 午前:県外へ長距離運行
- 昼:積み下ろし+待機1〜2時間
- 15時頃:帰路につく
- 夜:帰社は18〜19時、洗車や給油、翌日の仕事の準備などを行う
- 夜19:30:日報を提出、点呼、退勤
こういう日が週に数回。もちろん、日によってはもっと早く終わる日もあるし、地場配送だけで済むこともあります。でも、拘束時間が9〜14時間に及ぶ日があるのは珍しくないのが現状です。
若い人がこれを聞いたらどうでしょうか?

正直、「その給料で、これ?」と敬遠する人がいるのも当然ではないかと思います
現場エピソード③:帰れない日のリアル

あるとき、中部地方〜関東まで走って荷降ろし。
荷主の段取りが悪くて3時間待ち → 客先のパレットに積まれた荷物をトラックにバラで積み替えでさらに2時間 → 高速に乗ったら事故渋滞…。
結局、翌朝に帰社&家には2日帰れず。

こんなハードな働き方がまだ残ってるのに、若い人が応募するわけないでしょう?
それでも古い幻想を求め続ける企業

一部の運送会社はいまだに、
「昔のように休日出勤も厭わない人材」
「長時間労働を受け入れてくれる人材」
——そんな今では“幻のような人材”を探しています。
でも実際は、そういう人材はいなくなったのに、企業はそれを認めない。

だから採用が進まず、人手不足が深刻化しているのです
生き残る運送会社の条件


じゃあ、どうしたら若い人は来るんだ?

それは至ってシンプルです
現代的なワークライフバランスを整えればいいんですよ
具体的には、以下のような条件になります。
- 年間休日120日を保証する
- 拘束時間・休息時間を守る仕組み作り
- “帰れる運行”を増やす
- 夜勤・長距離は割増を明示(乗務員の負荷に応じた明瞭な賃金形態)
- 資格支援&キャリアロードマップを見せる
- 副業や多様な働き方を認める
これができる会社だけが、これから生き残ります。

もちろん会社側からすると、できる事できない事があるでしょう
すぐに休日を増やすことは難しいかもしれませんが、不可能を可能にするレベルの変革が必要な段階にきているので、頑張っていただきたいと思います

会社にとっては「休みを増やす=コスト増」で簡単ではないのだが…
「現状維持は衰退」と、ビジネスの世界ではよく言われます。
そのうち政治や制度がなんとかしてくれるだろうと考えるのはあまりに楽観的ですし、ジリ貧の現状を打破するには、今こそ最大限の企業努力が必要になってきています。
現場で実感する「休ませる=武器になる」

昔は「働かせる=会社の利益」でした。
でも今は逆で、ワーク・ライフ・バランスを重視した2024年問題で長時間労働頼みの収益モデルは崩壊しています。
時代のトレンドは、「休ませる=採用力・定着力」になってきている。
事実、2024年度の運送業倒産は328件と増加傾向で、長時間労働モデルの限界が来ています。

私の肌感覚でも、休みやすい会社=人が集まっている会社です
若い人にとっては「年収+休める安心感」がセットじゃないと選ばれないんです
まとめ:ワークライフバランスが採用力を決める

今回の記事、議論の争点をまとめると、以下の4点になります。
- 嫁ブロックが起きやすい業界なのに、休日すら取りにくいのでは若い世代が選ぶはずがない。
- 昔のような「休日出勤で稼ぐ人材」や「ゼロ賃金奉仕をする人材」はほぼ絶滅、または絶滅危惧種になった。
- 労働者は賢くなり、会社に依存せず「副業や投資」で収入を補う人が増えている。
- それでも古い人材像を追いかける企業こそ、人手不足で苦しんでいる。

じゃあもう昔みたいな“根性あるやつ”は来ないのか…

そうです!
昔の“休日返上で奉仕する人材”なんて、もはや幻です
今は“休める・帰れる・稼げる”会社だけが人を集めて勝ち残ります
トラックドライバー歴23年の私から見ても、これからの物流業界はワークライフバランスを整えた会社が若い人を惹きつけ、未来を切り拓くと確信しています。
最後に:筆者から若手ドライバーへのメッセージ

もしこの記事を読んでいるあなたが「トラックドライバーに挑戦してみたい」と思っているなら、声を大にして伝えたい。
- 昔みたいに無理する必要はない
- 休日を削ってまで働く必要はない
- 副業や投資で自分の人生を作っていい
トラックの仕事は大変だけど、やり方次第ではお金も時間も作れる。
そして今は、会社の体制や仕組みを“選べる”時代です。
「休める・帰れる・稼げる」環境を整えている会社は必ずあるし、そういう会社こそがこれから伸びると思います。
だから自分をすり減らすより、自分の人生を大事にしながらトラックに乗る道を選んで欲しい。

物流は「不人気業界」と言われますが、私は逆に、若い人にはチャンスが大きい業界になってきたと思っています
いまのベテラン勢も数年もすれば引退していき、ポストは空いていく。そこに入れるのは今から業界に入ってくる若手です。

20代や30代でこの業界に入ってきたら「金の卵」扱いをされて大事に扱ってくれる会社が必ずあります
真面目に働いていれば、会社がしっかり稼がせてくれるはずです
将来のためにお金を貯めたいけど、どんな仕事で稼げばいいだろう?
そんなふうに悩まれている若年層の方にこそ、ぜひ運送業界の門を叩いてもらいたい。
運送業界で20年以上勤めてきた私も、今の新しい感性を持った若い方と一緒に仕事ができることを喜ばしく思っております。
ともに物流を支えて業界の発展に貢献していけたら、今は不人気の運送業界でも、きっと未来は明るくなっていくはずだと信じています。
ではまたっ、ピース!
